The archives「Trench Coat」②

The archives「Trench Coat」②

ブランドのアーカイブとして今まで作り続けてきた逸品を
振り返る企画として前回トレンチコートパート1でご紹介
しましたが、今回は後編となるパート2をお届けします。

 

Rawtus 2011 fall-winter collectionから定番スタイルとして
毎シーズン作り続けられていて、シーズンにより
レザーだったりテキスタイルだったりと色々と
表情を変えながら変化しています。

 

 

2015 Spring
シルエットはややタイトでコンパクトなスタイルは継続。
着丈を少し短めに設定して若々しさをプラス。
そして春夏シーズンは衿のデザインにも気を使っています。
秋冬物は台衿というパーツを加えて首回りを高めに設定し、
首元からの外気の侵入を遮断するような仕様ですが逆に
春夏物は台衿を無くして首元をすっきりとさせています。

 

基本デザインは大きくは変えていませんが2014年春夏版と
大きく違う点は袖付けのデザイン。
トレンチコートの定番は「ラグランスリーブ」という袖が
わりと定番的に採用されています。
ラグランスリーブはクリミア戦争のときラグラン将軍が
負傷した兵士でも容易にコートを着れるようにアームホール
を深めに設定しているので袖を通しやすい特徴があります。

 

秋冬物ならば下に着る服の厚みも増えるのでラグラン
スリーブでも良いのですが、下に着る服が薄くなってくる
春夏だとちょっと袖が大きく見えてしまいます。
なので今シーズンはテーラージャケットのような
「セットインスリーブ」
を採用し全体的にすっきりとさせています。
ボタンももちろん本黒蝶貝製のボタンを使っています。

 
 

 

2015 Fall
このシーズンはぐっと大人っぽくラグジュアリー感をプラス。
衿にはブルーフォックスの毛皮をダークブラウンに染めた
付け衿が装備され、ライナーには秋冬定番のカシミヤニット
のライナーがセットされています。
艶のあるネイビーブルーの品の良さと相まってシックな
大人の女性を演出出来る大人トレンチ仕様です。
衿やライナーは取りはずして着れるので春先も活躍する
アイテムとして評判が高かったシーズンです。

 
 

 

2016 Spring
このシーズンは少し肩の力が抜けた優しいイメージに。
着丈は前シーズンよりかなり長めに設定して歩いたときに
揺れる裾の軽さと美しさにこだわりを込めました。
フロントのドレープやショルダーフラップのひらひら感と
全体のボリューム感はレザーの自重でストンと下に落ちる
感じがリラックス感を感じさせてくれます。
色目もミリタリー調のオリーブグリーンで品良く

 
 

 

2016 Fall
少し肩の力が抜けた優しいイメージは継続しつつ
長めの着丈の大人トレンチです。
秋冬ならではのフォックスファー×カシミヤニットの
ライナーのセットはそのままに衿のカラーをオフ白に
することで顔映りが暗くならないような工夫を加えて。

 
 

 

2017 Spring
トレンチの解釈を大幅に広げてデザインしたシーズン。
衿をバッサリと裁ち落として袖丈も7分袖に短くして
とにかく軽さを見た目と重量で表現しています。
トレンチらしさは肩のストームフラップとウエストの
ベルトのみという潔いカッティングですが、トレンチ型
のデザインが顧客様に行き渡った感があったので大幅に
デザインを刷新しました。

 
 

 

2017 Fall
レザーのトレンチ自体、だんだんと人気が下火になっていた
感じがしたのでこのシーズンはあえてレザー以外の素材を
駆使してデザインしたシーズン。

 

とはいえ、ポケット口だったり衿の裏側にレザーを使って
いるのと、ボタンもかなり小さめなレザー製のボタンが
アクセントとなり、幅広ベルトも格好よく決まっています。
このデザインを考えたとき、レザーならではの裾や前端の
裁ち切りのデザインが布地だとほつれてしまうため
生地のセレクトにとても悩みました。

 

いろいろと生地を見ていく過程で、裁ち切ってもほつれない
生地がある、という情報をキャッチ。
早速取り寄せて試作してみると、見た目は厚手のウールの
ジャージーのようですが布地のようなハリとコシもあり
端を裁ち切ってもほつれない。

 

この「バランサーキュラー」という特殊な生地に出会った
ことでこのデザインが完成しました。
この生地は熱圧縮していてウールメルトンのように
しっかりと目を詰まらせながらもジャージーの伸縮性がある
画期的なファブリックです。
ロゥタスならではのさらっと羽織れるデザインです。

 
 

 

2018 Spring
このシーズンくらいからトレンドとしてオーバーサイズが
浮上してきたためシルエットが今までとガラッと変わった
シーズンとなった。
袖も太く、肩線も大きく落ちたドロップショルダーにした
デザインのトレンチは短めの着丈にすることで太めのパンツ
などとも相性が良くルーズに着こなせるスタイルが好評。
肩章も大きくドロップさせて全体のバランス感をオーバー
に表現しています。

 
 


 
2018 Fall
オーバーサイズのトレンドは引き続き浸透しているので
このシーズンもドロップショルダーで横巾の分量もかなり
大きめにカッティングしています。
また、軽さを感じさせる為に両脇に深めのスリットを入れ
ることで下のボトムがチラッとみえるのもポイント。
秋冬といえばファー衿+カシミヤライナーが定番でしたが
この頃からそれらのパーツはバラで販売するようになった。

 
 

 

2019 Spring
このシーズンは「カーディガン」としてのトレンチコート
という着想でフロントのラペルをバッサリと裁ち落として
フロントが衿付けから裾まで真っすぐなラインにデザイン。
フェイクでボタンデザインは残してトレンチ感は残しつつ
も着るというより「羽織る」感を強調したシーズン。

 
 

 

2019 Fall
トレンチコートのデザインを「ムートンファー」で
仕立てた究極のトレンチコートが登場。
色々と素材を変えてトレンチコートを作り続けてきました
が、やはりレザーメインのブランドでもあるので
フェイクファーではなくて本物を使いたかった。

 

ベルト、チンフラップ、肩章、ポケット口などはレザーを
使い、黒の配色にすることで強さも感じられるデザイン
になった。
これだけの分量感なので価格も48万円(+税)という
ブランド始まって以来の超高額商品となってしまったが
今後もこのようなトレンチは出来ないだろうな、、、という
のが感想です。

 

今後もトレンチは好きなデザインなのでまだまだ可能性は
あるアイテムとして今後を楽しみにしていてください。

デザイナー談

 

The archives「Trench Coat」①はこちらから